カテゴリー「筑波流茅葺きの技」の5件の記事

2012年10月10日 (水)

差し茅

トオシモノやキリトメなど技巧的な装飾で知られる筑波流茅葺きですが、

部分的に傷んだ屋根の補修など、地味な仕事ももちろん欠かせません。

茅葺き屋根は全体が均一に傷むのではなく、南面よりも日当たりが悪く湿りがちな北面が先に傷みますし、

曲屋などでは勾配の谷の部分、さらに平らに葺かれた面では茅の質が悪かったり、縄の締めが甘い、

鳥につつかれた部分など、弱点から先に傷みます。

少しでも凹部ができると、そこに雨水が溜まり、想像以上にハイペースで浸食は進みます。

屋根が古くなると、そうしたカ所があちこちに出てくるので、全体的に表面の傷んだ部分を葺き直します。

けれども最初は、被害が大きくならないうちに「差し茅」をして応急的に対応するのが一般的です。

自転車がパンクしても穴が特に大きくないかぎり1回、2回目ではパッチを貼ってしのぎ、

何度も繰り返したらはじめてチューブを交換する、つまり屋根なら葺き替えといった感じでしょうか。

つぎの写真は、補修した部分と次回にまわして残した部分とのつなぎ目に水が集まり、溝状に傷んでしまった例。

差し茅は、濡れて堆肥のように分解してしまった茅を取り除き、そこに新しい茅を詰め直していきます。

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仕上げにハサミで平らに切りそろえます

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80歳になる廣山親方。抜群のバランス感覚です。

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2012年1月30日 (月)

小まるき

筑波流の茅葺きでは、茅刈りで束ねて運んだ茅束を、そのまま屋根に乗せることはしません。
職人が屋根上で作業しやすいように、あらかじめ小束に束ね直しておきます。
これを「茅ごしらえ」または「小まるき」と言います。
「まるく」とは束ねるという意味の動詞。小さく束ねるから「小まるき」です。

一口に筑波流といっても、葺き方には職人ごとに個人差があります。
それぞれの親方は長年の仕事のなかで葺きやすいオリジナルのスタイルを確立し、
弟子へと継承されるうち、違いになったものと考えられます。

「小まるき」での束ね方にも、職人によって微妙に異なりますが、
今回の体験では長い茅をまん中で2つに切って使う「ぶっちがい」と、
短く細い茅をそのまま束ねる「小がや」とを教わりました。

ぶっちがい

茅の穂のある頭を左右互い違い(ぶっちがい)に振り分けて束ね、まん中で2つに切ります。
丈のあるススキを「小まるき」するときの方法です。

Buchigai1

茅を一掴みしたら、根もとを揃えず20cm前後の幅でばらけさせ、
頭の側が広がりすぎないように、外側に広がりすぎた葉を掴んで引きちぎり、
ちぎった葉は根もと側に掴み直します。

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一掴みごとに頭を左、右と交互に置いて束ねていきます。

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まん中側を2カ所、ワラを使って結束します。

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束のできあがり。

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押し切りを使ってまん中で2つに切ります。

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一束から2つとれます。これを6束ずつ束ね、大きさごとにストックし、
必要に応じて屋根上の職人の手元に運びます。

小がや

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短くて細い茅は「小がや」と呼ばれ、ぶっちがいではなく、根もとを揃えて束ねます。

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「小がや」は癖がなく扱いやすい茅です。

2012年1月29日 (日)

竹のぐし

筑波周辺では棟のことを「ぐし」と呼びます。
棟は風で飛ばされないように何かで押さえる必要があり、
竹で簀巻き状に固定するのが筑波流の方法です。
写真はもっとも基本的なスタイル。
さらに家によってはシュロで飾りをつけたり、妻の部分に「キリトメ」と呼ばれる装飾を施したり。
ぐしは飾りを工夫できる部分でもあります。
やさとの茅葺き屋根を見学されるなら、てっぺんにも注目してください。

Takesumaki

ぐしができあがれば、屋根の完成は間近。

Takesumaki2_2 

わらで枕をつくり、茅(ススキ)を巻き、防水用の杉皮を巻いたのち、竹の簀巻きで押さえます。
最近では杉皮の代わりにトタン板を使うことが多くなりました。
銅線の巻かれた黒っぽい部分はシュロでつくった飾り。
こののち、わら部分にハサミの先で水や竜などの文字を切り込み、
墨で塗って下からも見えるようにするのが一般的なデザインです。

2011年2月12日 (土)

トオシモノ

筑波流茅葺き屋根に見られる代表的な技のひとつが「トオシモノ」または「段葺き」と呼ばれる装飾です。深く差し出された軒に付けられた縦縞の模様で、下地の白い層に稲ワラ、黒い層に煤で汚れた古茅、色の薄い層に新茅が使われています。層がつくられるのは軒の見える部分のみ。層の数が多く軒が厚くなるほど高級な仕上げで、技術的にも難しくなり、手間代も余計にかかります。茅束を同じ幅でつくるだけでなく、軒先の茅が落ちないように尺八といわれる短い竹を縦方向に何本も据えていくのです。

とはいえ、軒が厚く前に出たぶん、屋根の勾配が緩く雨水の流れが悪くなるため、屋根の寿命は短くなります。それでも農家は装飾を求め、競ってトオシモノの段数を増やしました。結果として職人の技が磨かれたのです。5段から7段のトオシモノはあちこちの民家で見られるのは、この地域の農家に昔から比較的余裕があったことの証といえます。

Hagiwaranokituke

筑波流茅手

つくば山麓は気候風土に恵まれた豊かな里。農家は屋敷を美しく保ち、屋根にも芸術性を求めました。その期待に応えたのが筑波流茅手と呼ばれる屋根職人です。竹簀巻きの棟や縞模様の軒下など、その技巧は日本一と言われます。しかし、かつて集落に数人は見られた職人は高齢化の一途をたどり、現在では県内で10数人にまで減ってしまいました。
 石岡市の歴史体験公園「常陸風土記の丘」では筑波流茅手の若手後継者を育成しています。職員2人が親方職人に弟子入り。園内建物や周辺民家の屋根葺きを行い、技の継承に励みます。当保存会も、補修を希望する民家に親方職人を紹介するなど、将来の茅葺き屋根保存を担う後継者の育成を応援しています。

Hiroyama_2  茅手・ 広山美佐雄さん

Watanabeoyakata  茅手・渡辺一男さん

Suzuki  茅手・鈴木重夫さん

Watanabe_2  後継者・渡辺大さん

Nishiwaki 後継者・西脇征志さん