カテゴリー「やさとの茅葺き民家」の6件の記事

2012年3月14日 (水)

やさとの茅葺き民家を訪ねて/大場家住宅(国登録有形文化財)

当ブログ右上のイメージ写真でも紹介している大場家住宅。

筑波流の細工が見事な、やさとを代表する茅葺き民家の一つです。

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間口8間、奥行4.5間、田の字に4つの座敷を持つ主屋は江戸末期に建てられたもの。
平成17年に国登録有形文化財になっています。

 家主の大場克巳さんは、観光ぶどう園を営んでいます。庭と周囲の果樹園は約3ha。高校卒業後、ぶどうの先進地である山梨県の勝沼で研修し、やさとに戻ってぶどう作りを始めて50年になるそうです。
 早くから顔の見える農業を心がけ、引き売りから、やがて観光果樹園をスタート。
主屋の土間でお客さんを接待していることもあって、屋根と庭には愛着を持って手入れを続けてきました。
「屋根を維持するのは大変だけど、『いいですね』『なつかしい』と喜んでくれるお客さんに励まされてます」
 と言います。
 屋根は名人とされた地区内の職人が長年補修していましたが、10数年前に亡くなり、
現在は同じく筑波流を受け継ぐ近隣の職人のほか、若手後継者も数年に一度の手入れにあたっています。
 筑波流の技に惚れ込んでいると語る大場さんは、棟や軒下の装飾などに「最高の仕上げ」を求めます。職人がそれに答えて、美しい屋根が保たれているのです。

 とはいえ、生活スタイルが変化しただけでなく、高齢化で職人も減るなか、次世代に茅葺き屋根を残していくのは簡単ではないと大場さん。
「これからは何か活用の方法を考えなければ」
 それが同時に、やさと地区の活性化にもつながったらと、大場さんは見学会や体験など、茅葺き民家を活用したイベントにも、積極的に協力しています。

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大場克巳さん。ぶどう園は8月~10月開園。

雨よけを設置して農薬を抑え、おいしいぶどうを作っています

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庭の石にはめ込まれた「登録有形文化財」のプレート

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棟にはシュロを使った「ちょんまげ」が飾り付けられています。「大名ぐし」と呼ばれる形です

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「煙出し」の「はかま板」には「水」の文字が描かれ、その下に杉の葉と竹を使った装飾が付けられています

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棟の妻部分には「キリトメ」と呼ばれる装飾が施されます。

大場家のキリトメは、差し込んだ竹の小口に色を付けて松竹梅を描いたもの

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大場家の入り口わきには、名人といわれた職人、故・岩崎氏によるキリトメの写真が掛けられています。竹の小口で絵をつくる技法は岩崎氏のオリジナルでした

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軒付けには3本の「トオシモノ」が施されています。いちばん外側の「ミズキリ」の内側に杉皮が挟まれ、その内側にはシノ竹が並べて差し込んであります。この装飾を施すことを「『くだ』をとおす」と言います。化粧のため、「くだ」の小口はペンキで白く塗られています

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角の軒付けに並べられた「くだ」

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土間にはいろりがつくられ、ときおり火が入れられます。

頭上の梁は、年末ごとに脚立を立てて大場さんの手で磨かれてきました

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大場さんは農村の暮らしを伝えたいと、蔵を私設の資料館にしています。かつて近隣で使われていた道具を集めました

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ワラ縄を編む機械。茅葺き屋根には大量のワラ縄を使うので、また再び動かしてみたい気がします

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糸車や背負子、くるり棒など、昭和20~30年代まで使われていました

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茅葺き職人の廣山さんより寄贈された半纏。昔は棟上げすると当家から職人衆に配られました

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「佐久の大杉」は大場家から徒歩5分。幹まわり約9m、東日本を代表する巨杉で、樹齢約1300年と推定。県指定天然記念物。

大場さんは地区のシンボルである大杉の保存にも熱心にあたってきました

2012年2月28日 (火)

上曽/銚子街道の峠越えに備えた宿場

小幡からフルーツラインに戻って左折、ここから約3.4km先の信号を左折した先が上曽です。
銚子から利根川・霞ヶ浦を通って水運された荷物は、石岡の高浜で荷揚げされ、柿岡、真壁を通って下館に運ばれました。
これが銚子街道で、上曽宿は上曽峠の手前で積み替えが行われた場所です。

綿引家は銚子街道と、足尾山と筑波とを結ぶ街道が交差したところに建てられた旅籠。
二階建ての茅葺き民家は、現在は住まいとして残されています。

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平屋の書院は、二階建ての旅籠棟と鍵型につながっています。池のある庭に面した落ち着いた佇まい。

奥座敷は格の高い方だけを通した特別な部屋でした。

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二階の欄干や看板など、旅籠の面影をよく残しています。

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軒付けにはトオシモノの縞模様に加えて、竹を差し込んで小口を白く塗った「クダ」を通して飾っています。

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キリトメには本家を表す文字と「カラクミトミ」と呼ばれる竹とシュロ縄を使った装飾が施されています。

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角の納まりの部分に、さりげなく飾られたツル。職人の遊び心を感じます。

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NHKの番組「小さな旅」で補修していた三輪家の門も上曽の集落にあります。このとおり立派に完成しました。

三輪均家では居住しながら3棟の茅葺き屋根を守っています。

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2012年2月27日 (月)

やさとの旧家を代表する屋敷構え/上青柳・木﨑眞家

2月12日はシンポジウムを前に、安藤教授の案内のもと、やさと地区の集落景観を見て回りました。

上青柳地区では、まず、やさと茅葺き屋根保存会の会長でもある木﨑眞家を訪ねます。江戸時代が始まる慶長年間頃より、この地に住んだのではないかといわれる旧家で、筑波山を背にして大きなケヤキの屋敷林に守られています。

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入り口は鏝絵の施された四つ足門。

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手入れの行き届いた庭が、訪れる人を迎えます。

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筑波山麓の旧家の屋敷の特徴を残している点で文化的価値が高いと安藤邦廣教授。

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パノラマにすると、左から茅葺きの「書院」と「母屋」、瓦葺きの「マデヤ」、トタン葺きの「小鳥小屋」が見えます。

その奥に見える生き垣(いきぐね)の向こうには「前の蔵」が隠れています。

万一火事が起きたとき、蔵を飛び火から守るため、高い生き垣で遮っているのです。

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木﨑眞さん(88歳)。つくばね森林組合の組合長も務める現役です。

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庭の柿の木の下で拾ったムササビ。首に牙でかまれた傷跡があり、ハクビシンにやられたらしい。

木﨑さんも「まさかムササビがいるとは知らなかった」

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座敷には、おひなさまが飾られていました

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2012年1月29日 (日)

生垣=いきぐね

やさとでは垣根を「くね」と言います。生垣は「いきぐね」。
とくに目を引くのは屋敷を囲む高垣で、高さ5mにもなります。
茅葺き屋根を風から守り、さらに火事のときは延焼を防ぐためにつくられてきました。
写真のお宅のおばあちゃんは
「私が嫁いできたときは、この高さでしたよ。昔はくねの内側に、もみじが並んで植わってました」と言います。
この高さになると毎年冬の剪定は植木職人がハシゴをかけての大仕事。手入れの費用もかかります。
それでも伐らずに残されているのは、家と庭を含めた屋敷全体を整えて風情を楽しむ「やさと気質」があればこそ。
いきぐねは茅葺き以外の家屋にも、やさとのあちこちに見られます。ぜひ探してみてください。

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三輪家は母屋、書院、門の3棟が茅葺き。屋敷の外側を、モチノキの「いきぐね」が囲んでいます。

2011年2月12日 (土)

茅葺き屋根の そば店

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やさとの中心街、柿岡の郵便局向かいに、かわいらしい屋根のそば店があります。かつて行商宿だった家屋で、そば店を始めたのは40数年前。「屋根の形はじいちゃまがあちこち見て回って、茅手さんと一緒につくったんだ。器用だったんだね」と、店主の鎌田さんは言います。地元の粉を使ったそばは飾らない味わい。天ざるなどのほか、けんちんなど暖かいそばもお勧めです。

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やさと周辺の茅葺き民家 1

やさと周辺の茅葺き民家は、庭や門などを含めた屋敷とともに代々大切に引き継がれてきました。現在は3棟が国指定の史跡や、国の登録有形文化財になっています。ここに紹介するほかにも、美しく整えられた民家は数多く、いずれの屋敷にも、日々手入れを怠らない農村の暮らしぶりの一端を見ることができます。

佐久良東雄旧宅

国学を修めた歌人、佐久良東雄(さくらあずまお)は、尊皇攘夷の志士として知られます。生家は江戸時代天明期の1751年の築。母屋と長屋門の茅葺き屋根2棟を残し、土蔵や生け垣のある落ち着いた屋敷構えは、国指定の史跡です。現在も民家として居住しながら、手入れがなされています。

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大場家

夏から秋にはブドウ狩りで賑わう大場観光ぶどう園。ぶどう棚を抜けると庭が整えられ、江戸時代末期に建てられた茅葺きの母屋は、現在も園主夫妻の住まいになっています。竹簀巻きに装飾を施した大名ぐしと呼ばれる棟や、棟の小口を飾る松竹梅など、屋根には筑波流茅手の粋な手技がいっぱい。平成17年、国の登録有形文化財になりました。駐車場には大型バスも停車できます。

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坂入家

ハウスを見下ろす南向きの高台に建つイチゴ農家の母屋です。東側には手入れされた日当たりのよい庭が続いています。江戸時代の建物は明治24年に改築されました。間口は12間。やさとでも有数の大きさを誇ります。軒を飾る7層のトオシモノも見事。現在も3世代が居住しています。平成22年、国の登録有形文化財になりました。辻地区のいちご団地にある丸坂いちご園を利用すると案内が受けられます。

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