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2012年10月 9日 (火)

高エネルギー加速器研究機構の茅生育状況を見て来ました

毎年12月に「筑波山麓茅刈り隊」として構内のススキを刈らせていただいている、つくば市の高エネルギー加速器研究機構KEK。

今年も例年どおり、ご協力くださるとのことで、茅の生育状況の視察と打ち合わせに伺いました。

最先端の素粒子物理学研究を行う機構内には一周約3kmにおよぶ加速器のトンネルが回っています。

世界中から研究者が集まる施設だけに、入り口近くには研究棟や事務所などのほか、食堂や売店まで多くの建物がありますが、

東京ドーム33個分、約150haの敷地面積から見ると、建物があるのはわずかで、多くが草の生えた空き地のように思えます。

ふつうの土地なら、もったいないので畑にしようなどと思うですが、ノーベル賞科学者も輩出した国の誇る重要な研究施設だけに、

近所の農家に地面を貸すわけにもいかないのでしょう。

かといって、生い茂る雑草を放置するわけにもいかず、機構では造園業者によって除草など管理を行っています。

こうして毎年定期的に草刈りした敷地内には、一年草であるススキが毎年生える場所ができました。

温帯の日本では草刈りをしなければ、土地の生態系は遷移を進めて、草地には灌木が入り込み、

さらに大きな木が育って、やがて林へと姿を変えます。

しかし、毎年草を刈ることによって、遷移は進まずにススキの原は毎年繰り返しススキを生やすわけです。

屋根などに使う茅を得るために、毎年意図的に人手が入って遷移を止めた場所が茅場。

そして高エネ研では敷地管理の結果、私たちが茅刈に入る以前から茅場に近い状態が保たれていました。

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とはいえ、ススキの原も実際に屋根材に使う茅として見た場合、ツル性のクズや、セイタカアワダチソウ、アシなど

ススキ以外の屋根材には適さない植物が混在することも多く、曲がりのない素性の良いススキが密生するところは少ないもの。

そこで私たちは、構内を事前に下見をさせていただき、とくに刈りやすい場所を選んでいます。

管理を進める造園業者にも協力していただきながら、選んだエリアのみ、草刈りせず12月まで残してもらっているわけです。

刈り取りに適した場所は毎年だいたい同じで、広い構内のうちの約2haほどにしかすぎません。

このエリアについてはクズの進入を防ぐため早い時期に薬剤散布を行うなど、高エネ研にご協力いただいています。

また、毎年の刈り取りにより地力が低下しているためか、ススキの生育が衰えがちなので、肥料成分の散布なども検討しています。

河川敷の茅場などでは刈り取り後に火入れを行うなどして地力低下を防ぎますが、研究所で火入れするわけにはいかず、

それに変わる方法が必要なのでしょう。

12月の茅刈りに来られる方からは、「生えてくるのを業者が処分する変わりに、刈ってあげているのでしょう」と

尋ねられることがありますが、そう単純な話ではなくて、高エネ研にはいろいろとお世話になって成り立っている「茅場」です。

やさとの茅葺き民家では、本当に助かっています。ありがとうございます。

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