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2012年10月の7件の記事

2012年10月27日 (土)

福島県南会津町 研修視察

南会津町舘岩地区には茅葺きの里として知られる二つの集落があります。

地域のみなさんには、今年5月にやさとを訪ねていただきました。

その縁もあって、紅葉盛りの10月27日、今度は私たち保存会が舘岩地区を訪ねました。

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前沢地区は曲家集落として国の伝統建造物保存地区に昨年指定されました。

たかつえスキー場から約10kmの雪深いところ。曲家の形態は雪かきの距離を少しでも減らそうと

土間を道路に近づけるための工夫なのだそうです。この地区に14棟もの茅葺き民家が残っているのは、

昭和60年に環境美か条例を制定して保存に乗り出したため。大学の先生から歴史文化遺産として価値が

高いと評価され、町と地域の人々とが協力して守ってきました。ちなみに現在14棟のうち12棟が一般の住宅です。

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伝統建造物保存地区となったいま、屋根の補修費の2/3は国からの補助でまかなっています。

それ以前は町が毎年400万円ほどの予算をとり、年に2軒ずつ計画的に補助していたと伺って

「さすが観光に力を入れている町は違うな」と、私たち保存会一同、感心した次第です。

また、国からの補助を受けていながら地元職人による見積もり、段取りを継承して

適正なコストで修繕を続けている点は、これまで地元行政が実績をつくってきたからこそ可能なのでしょう。

地区としては今後は生活環境を守りながら、一方では活性化をはかっていきたいと模索していきたいとのこと。

集落の入り口で300円の入場券を販売するほか、

茅葺き民家のひとつを活用した前沢交流館では集落内で穫れた野菜の直売などを行っていました。

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お話しを伺った前沢区長で前沢景観保存会会長の小勝周一さん。

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この日はちょうど新そば祭り。集落の入り口にある「そば処曲家」で挽きたて打ちたての新そばをいただきました。

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参加したメンバーで記念写真。

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その後、舘岩地区に残るもうひとつの茅葺き集落、水引地区に向かいます。

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集落の奥の茅場では、近隣と都会からのボランティアを集めた茅刈りツアーが行われていました。

水引集落は自由に改築できなくなるなどの理由で行政のバックアップを受けない選択をしたそうです。

そうしたなか、茅刈ツアーは水引集落の茅葺き屋根を毎年2軒ずつ差し茅して補修していこうと、

愛知産業大学特任教授の藤木良明氏の呼びかけではじまったもの。

差し茅は一軒あたり10だんの茅を用意し、8~10人の職人手間をかけるプランで進められています。

集落は藤木氏の支援も借りつつ、これまでどおり自分たちでできる範囲の補修で屋根を維持してきたわけです。

鎌を使って手刈りし、もとを揃えたうえ直径30cmほどに束ねてワラで縛ります。

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小束を6把束ねて1ボッチ。1ボッチ×6束で「1だん」と数えるそうです。

1ボッチの大きさは、だいたい私たちが一尋(約1.8m)の縄で縛る1束と同じくらいなので、

×6束の「1だん(1駄)」も同じくらいの分量になります。

私たちは機械刈りで手早く家に持ち帰り、それから小まるきしますが、

会津では手刈りしてもとを揃え、その場で小まるきしてしまう感じ。

ちなみにこの方法だと慣れた人で1日2だん 刈るそうです。

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私たちは機械を使って慣れた人なら1日5~6駄刈ります。この量を小まるきして切りそろえるのにもう1日。

手刈りと機械刈りとで、仕事の効率の差は 意外と少ないのかもしれません。

水引集落にある民宿「離騒館」。

http://www.kanko-aizu.com/03/detail-0-0-48.html

裏側が傷んでいるため、これから差し茅すると、千葉から嫁に来たという奥さんに伺いました。

登山が縁でこの集落に来たのち、この民家を残そうと民宿を始めたそうですが、

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「やさとの茅葺きでさえ維持が大変なのに、雪国で茅葺きに住む苦労は並大抵ではないでしょう」と、

心から共感する私たちなのでした。

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当保存会でもボランティアを集めて茅刈りを行うなど、水引に似た取り組みを行っています。

しかし、屋根を維持するもろもろの作業を習慣としてきた世代から、手のかからない現代的な生活に親しんだ

次の世代に交代するなかで、これまでどおり各戸で茅葺きを残すのは難しいのが現実です。

地域の資源として残すのなら、行政の資金面でもバックアップも必要だと思います。

前沢と水引、ふたつの先進事例を持つ舘岩地区を訪れて、いろいろと考えさせられた研修視察でした。

 

2012年10月25日 (木)

サイクリンググループの案内しました

シルクロードを自転車で走るほか、月に何度かあちこちをサイクリングしている

シルクロード雑学大学のみなさんが、やさとの茅葺きを訪ねるということで、

一緒に走ってきました。一行は土浦から旧筑波鉄道の線路が自転車道になった「つくばりんりんロード」で

筑波山南麓の北条へ。ここからサイクリストに人気の不動峠を越えて、やさと入り。

当事務局は、いちごハウスが並ぶ辻集落の、坂入家で午後イチに待ち合わせて合流しました。

観光イチゴ園「丸坂」を営む坂入家の母屋は、国の登録有形文化財。

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その後、フルーツラインを走って上青柳地区へ。木﨑眞家でおばあちゃんと記念写真。

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木﨑清彦家の虚空蔵堂。

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クルマのほとんど通らない田舎道をたどります。

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茅葺きの家でゆっくりしていたら、浦須の佐久良東雄生家を出る頃には夕暮れに。

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こののち大場家をまわったのち、国民宿舎つくばねのバス送迎を利用して、

山の中腹の宿に泊まるプランでした。翌日は加波山周辺の尾根沿いに伸びる舗装の林道を走ったとここと。

60歳~70歳代中心のみなさんには、自転車って年齢関係なしに楽しめるんだなと

サイクリング好きの事務局としては、嬉しい気分になりました。

 

2012年10月19日 (金)

やさと茅葺きサイクリング 参加者募集!

やさとには、いまなお多くの茅葺き民家が残ります。とはいえ広いエリアに散らばっているため目立ちません。

やさとの茅葺きめぐりにぴったりの足は自転車です。にほんの里100選にも選ばれた農村風景を眺めながら、

やさとを代表する茅葺き民家を訪ねます。クルマの少ない道をのんびり走ってみてください。

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●主催  やさと茅葺き屋根保存会

●日程  11月23日(祝)※雨天順延

●集合  JR常磐線高浜駅(鉄道にてお越しの方)    午前8時20分
      石岡市常陸風土記の丘(車にてお越しの方)   午前9時15分

●コース 集合場所~上青柳~上曽~柿岡~佐久~南山崎~岩間駅または風土記の丘 

      トータル約50km

      詳しくはルートラボをご覧ください。

      http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=8a41353deda59a10f8225250fb76de8c

●昼食  柿岡のカフェを予定

●自転車 各自ご用意ください。

       走行スピードは時速15kmほど。全区間舗装路です。

        途中上り坂もあるのでクロスバイク・MTB・ロードバイクなどスポーツタイプをお勧めします。

       メカニックサービスはありません。自転車は事前の整備をお願いします。

       とくにブレーキ系、タイヤなどホイール系については必ずチェックしてください。

       また、万一の場合のダメージを和らげるため、自転車用ヘルメットの着用を推奨します。

●ガイド  伴走してコースと見どころを解説いたします。走行は各自の責任でお願いします。

●参加費 無料(昼食代は各自ご精算)

 ※参加には事前の申込が必要です。保存会負担で傷害保険に加入いたします。

●申込受付期間 10月15日~11月16日

●お申し込み
    つぎのURL(エントリーフォーム)よりお申し込みください。

    http://form1.fc2.com/form/?id=801311

 

2012年10月14日 (日)

つくば市六所で茅葺き体験を行いました

筑波山の参道にほど近い、つくば市六所で進んでいる古民家の移築再生。

建前を終えて骨組みた立ち上がり、いよいよ屋根の茅葺きがスタートします。

茅葺き作業を体験するワークショップを筑波山麓グリーン・ツーリズム推進協議会との共催で

10月14日に行いました。

まずは茅を屋根に上げる前の段取り。茅ごしらえから。

ススキを小束に束ね直します。教えてくれたのは職人の渡辺一男さん。88歳現役です。

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屋根に上げる大量の茅をこしらえるのは根気のいる作業。

大勢で当たればはかどります。

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長い茅は、束ねたら押し切りを使って真ん中で二つに分ける「胴切り」に。

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屋根に上げやすいよう、6束ずつまとめて縛ります。

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いよいよ屋根上での作業体験。並べた茅を押さえる竹「おしぼこ」を

先ほど教わった縄縛りで固定します。しっかり止めるのはなかなか難しい。

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指導は廣山美佐雄さん(80歳)。足を屋根上に持ち上げて踏みながら縛るのは、

若くてもやってみるとなかなかできないもの。

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当日の模様はこちらにもUPされています。

約50人のみなさんにご参加いただきました。ありがとうございました。

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2012年10月10日 (水)

差し茅

トオシモノやキリトメなど技巧的な装飾で知られる筑波流茅葺きですが、

部分的に傷んだ屋根の補修など、地味な仕事ももちろん欠かせません。

茅葺き屋根は全体が均一に傷むのではなく、南面よりも日当たりが悪く湿りがちな北面が先に傷みますし、

曲屋などでは勾配の谷の部分、さらに平らに葺かれた面では茅の質が悪かったり、縄の締めが甘い、

鳥につつかれた部分など、弱点から先に傷みます。

少しでも凹部ができると、そこに雨水が溜まり、想像以上にハイペースで浸食は進みます。

屋根が古くなると、そうしたカ所があちこちに出てくるので、全体的に表面の傷んだ部分を葺き直します。

けれども最初は、被害が大きくならないうちに「差し茅」をして応急的に対応するのが一般的です。

自転車がパンクしても穴が特に大きくないかぎり1回、2回目ではパッチを貼ってしのぎ、

何度も繰り返したらはじめてチューブを交換する、つまり屋根なら葺き替えといった感じでしょうか。

つぎの写真は、補修した部分と次回にまわして残した部分とのつなぎ目に水が集まり、溝状に傷んでしまった例。

差し茅は、濡れて堆肥のように分解してしまった茅を取り除き、そこに新しい茅を詰め直していきます。

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仕上げにハサミで平らに切りそろえます

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80歳になる廣山親方。抜群のバランス感覚です。

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2012年10月 9日 (火)

高エネルギー加速器研究機構の茅生育状況を見て来ました

毎年12月に「筑波山麓茅刈り隊」として構内のススキを刈らせていただいている、つくば市の高エネルギー加速器研究機構KEK。

今年も例年どおり、ご協力くださるとのことで、茅の生育状況の視察と打ち合わせに伺いました。

最先端の素粒子物理学研究を行う機構内には一周約3kmにおよぶ加速器のトンネルが回っています。

世界中から研究者が集まる施設だけに、入り口近くには研究棟や事務所などのほか、食堂や売店まで多くの建物がありますが、

東京ドーム33個分、約150haの敷地面積から見ると、建物があるのはわずかで、多くが草の生えた空き地のように思えます。

ふつうの土地なら、もったいないので畑にしようなどと思うですが、ノーベル賞科学者も輩出した国の誇る重要な研究施設だけに、

近所の農家に地面を貸すわけにもいかないのでしょう。

かといって、生い茂る雑草を放置するわけにもいかず、機構では造園業者によって除草など管理を行っています。

こうして毎年定期的に草刈りした敷地内には、一年草であるススキが毎年生える場所ができました。

温帯の日本では草刈りをしなければ、土地の生態系は遷移を進めて、草地には灌木が入り込み、

さらに大きな木が育って、やがて林へと姿を変えます。

しかし、毎年草を刈ることによって、遷移は進まずにススキの原は毎年繰り返しススキを生やすわけです。

屋根などに使う茅を得るために、毎年意図的に人手が入って遷移を止めた場所が茅場。

そして高エネ研では敷地管理の結果、私たちが茅刈に入る以前から茅場に近い状態が保たれていました。

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とはいえ、ススキの原も実際に屋根材に使う茅として見た場合、ツル性のクズや、セイタカアワダチソウ、アシなど

ススキ以外の屋根材には適さない植物が混在することも多く、曲がりのない素性の良いススキが密生するところは少ないもの。

そこで私たちは、構内を事前に下見をさせていただき、とくに刈りやすい場所を選んでいます。

管理を進める造園業者にも協力していただきながら、選んだエリアのみ、草刈りせず12月まで残してもらっているわけです。

刈り取りに適した場所は毎年だいたい同じで、広い構内のうちの約2haほどにしかすぎません。

このエリアについてはクズの進入を防ぐため早い時期に薬剤散布を行うなど、高エネ研にご協力いただいています。

また、毎年の刈り取りにより地力が低下しているためか、ススキの生育が衰えがちなので、肥料成分の散布なども検討しています。

河川敷の茅場などでは刈り取り後に火入れを行うなどして地力低下を防ぎますが、研究所で火入れするわけにはいかず、

それに変わる方法が必要なのでしょう。

12月の茅刈りに来られる方からは、「生えてくるのを業者が処分する変わりに、刈ってあげているのでしょう」と

尋ねられることがありますが、そう単純な話ではなくて、高エネ研にはいろいろとお世話になって成り立っている「茅場」です。

やさとの茅葺き民家では、本当に助かっています。ありがとうございます。

2012年10月 1日 (月)

ふるさと文化財の森システム推進事業

筑波山麓茅刈り隊や、やさと茅葺きサイクリングなど、今年9月から3月に当会が行う企画の多くは

文化庁の「ふるさと文化財の森システム推進事業普及啓発事業」として行っています。

文化庁HP http://www.bunka.go.jp/bunkazai/hozon/system.html によると

国宝や重要文化財などの文化財建造物を修理し、後世に伝えていくためには、木材や檜皮,茅,漆などの資材の確保と、これらの資材に関する技能者を育成することが必要です。このため文化庁では、文化財建造物の保存に必要な資材の供給林及び研修林となる「ふるさと文化財の森」の設定、資材採取等の研修、普及啓発事業を行う「ふるさと文化財の森システム推進事業」を実施しています。

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これを、やさと茅葺き屋根保存会の活動にあてはめるなら、

「筑波流の茅葺き民家には文化的価値のあり、これを後世に伝えていくためには、茅場と茅刈りの継承、

茅ごしらえなど民家における屋根仕事の存続、茅葺き職人の育成などが必要で、さらに、こうした営みを応援する人を増やすため

営みを広く知ってもらうべく、さまざまな活動に取り組んでいきましょう」という趣旨です。

期間中のイベントは、参加費を抑えて実施していますが、これは保険料や事務経費などを普及啓発事業の

受託費よりまかなうことで可能となっています。

参加いただいたみなさんは、体験を通じて茅葺き屋根の営みを知り、その体験から得た感想をまわりの方にも広めてくれるでしょう。

それは文化的価値を後世に伝えるための大きな力に違いありません。

茅葺き屋根に直接関わる私たちは、みなさんの声にいつも励まされています。_mg_2488

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