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2011年3月 6日 (日)

茅と茅場

Q 茅はどんな材料なのですか?

 茅とは屋根を葺く材料の総称です。筑波周辺では狭い意味で、もっともよく使われるススキが茅と呼ばれますが、ほかにもさまざまな材料が使われます。

ススキ/山茅(やまがや)。開かれた山野で最初に生えるパイオニア植物の一つ。丈夫だが、刈り集める必要があり、大きな主屋を持つ上層農家で利用された。株立ちした太く硬いものよりも、広がって生えた細長くしなやかなもののほうが良質。長いものは互い違いに束ねて真ん中で二つに切る「胴切り」とし、短いものは根元を揃えて束ねた「小茅」として使われる。

ヨシ/湖茅(うみがや)。イネ科ヨシ属の多年草。湿地に見られ、高さ1~3m。茎は中空。現在は宮城県北上川河口が全国に出荷する屋根材の一大産地。筑波山周辺ではあまり使われない。

シマガヤ/霞ヶ浦での通称。高さ70~180cmのクサヨシと、30~70cmのカモノハシが混ざります。いずれもイネ科の多年草で湿地周辺に生育。細くしなやかで耐久性に優れた高級屋根材です。かつては地元で利用されていたが、現在では、文化財を中心に、各地に出荷されるようになりました。バインダーで刈り取り結束できるため、下ごしらえなしで屋根に使えるメリットを持ち、石岡市内でも佐久良東雄生家など数軒で利用されています。

稲ワラ/屋根材としては痛みが早いですが、脱穀と同時に手に入ります。小さな小屋がけなどには単独でも利用され耐用年数は数年です。主屋の屋根では雨のかからない下地に使わました。

小麦ワラ/筑波山周辺ではかつて各家で毎年生産される小麦ワラが、主屋や蔵などの屋根材として一般的に使われました。耐久性は稲ワラよりも優れ、ススキやシマガヤよりも劣ります。上層農家の大きな主屋は屋根面積が広いぶん流れる雨量も多くなるため小麦ワラでは役不足で、刈り取ったススキを使う必要がありました。

竹/茅とともに大量に必要な材料です。下地には真竹を、茅を締めるおしぼこなどには篠竹も使います。ぐしの巻き簀は孟宗竹の割竹。棟上のけんとうぎには孟宗竹、シュロも好まれます。繊維内の糖質が増える冬に伐ったものは虫が食いやすいため伐り旬は9~10月。この時期に伐った竹は濡れないかぎり長年の耐久性を持っています。

Q 茅場はありますか?

 かつては田畑のできない傾斜地などに集落の茅場があり、毎年2、3軒ずつ葺き替えができるよう共同管理していました。また、山すそや雑木林の中などに10a~1haの茅場を持つ家もあり、茅刈りは近隣や親類に手や馬を頼んだといいます。
 現在では、搬出しやすい休耕田、栗山の跡地などに10~30aの茅場を私有する家が数軒あります。また、河川敷、工業団地や宅地造成予定地の空き地などに生えた茅を許可を得て刈る家も見られます。
 茅場の肥料分が多すぎると、茅は太く暴れて使いにくくなります。毎年刈り取ると肥料分が減り、細くしなやかで使いやすい茅が生えるといわれます。また、古い茅やセイタカアワダチソウなどの雑草、灌木も混ざりにくくなります。このため茅場を私有したり、毎年刈り取れる空き地などを確保している場合でも、自分で使わない年は、茅葺き屋根を持つ別の人に茅を譲り、刈り取ってもらうケースが多くなっています。
 山の土手や田んぼの畦に生えている茅を集めたり、生えている場所を見つけて刈り取ってくることもあります。これを「拾い茅(ヒロイガヤ)」と呼びます。とがめられることはまずありませんが、よその土地から勝手に取ってくるには違いないので、多少の後ろめたさがあり、人通りの少ない時間を見計らって手早く作業します。
 平成16年からは、やさと茅葺き屋根保存会が、つくば市にある高エネルギー加速器研究機構の協力のもと、ボランティアによる新たな茅刈りをスタート。無理に拾い茅をする必要もなくなり、茅葺き屋根の家主にとっては茅集めについての精神的な負担が大きく軽減されました。

Q 高エネルギー加速器研究機構の茅刈りについて教えてください

 最先端の素粒子物理学を研究する同機構には、国内外から第一級の頭脳が集まっています。敷地は100haほどで、敷地内には加速器のトンネルが一周約3kmほども回っています。地上部分の広大な敷地内にはススキが自生し、業者による毎年の刈り取り粉砕処理により、茅として良質な状態を保っていました。
 この茅を平成16年からは、やさと茅葺き屋根保存会を中心とした「筑波山麓茅刈り隊」が刈り取り活用しています。作業は毎年12月、茅葺き屋根保有者と行政、学生、さらに茅葺き屋根を応援したい市民のボランティアが協力して行われます。
 茅は地域の茅葺き民家補修に使われます。ここ数年は12月前半の土日曜日を中心に6日間、延べ約150~170人ほどが参加して、敷地内の約4haから一抱えの茅束を1800~2000束ほど刈り取り、10棟前後の補修にあてています。現代の「結い」ともいえる取り組みです。

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高エネ研の茅場。屋根を葺くのに最適な良質のススキ(山ガヤ)が密生しています。

Q シマガヤはどこで刈られていますか?

 シマガヤの生える霞ヶ浦湖畔の湿地は、古くから茅場として集落で共有されてきました。現在では稲敷市浮島東端の稲敷大橋下にあたる妙岐の鼻(約3ha)や、稲敷市旧東町の上之島の湿地(約10ha)などが知られ、権利を持つ家が刈り取って全国に出荷しています。
刈り取りは12~1月、2~3月には火入れが行われます。

Q 茅を数える単位は?

 茅の束の大きさや数え方は地域によって異なります。茅葺き屋根の形と同様に、それぞれの風土や文化に適した方法が育まれてきたのです。
 筑波山周辺では、一尋(約1.8m)の縄を一重に巻き、しっかりと圧縮して縛った束を1束とします。これを6束集めて1駄。かつて馬の背に6束ずつ積んで運んだのが単位の由来です。
 ちなみに現在では、軽トラック1台に4~5駄、2tトラックで10駄、4tなら20駄ほど積みます。いずれも慣れた人が山積みした場合の積載数です。

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トラックで茅を運びます。ロープで締め上げて圧縮しながら山積みします。

Q 葺き替えにはどのくらいの茅が必要ですか?

 屋根1坪に4~5駄とも言われますし、7駄とも言われます。
 補修の場合は、使える茅を残すため、もっと少なくて済みます。ただ、痛みが少なければ茅は少なめですみますが、雨漏りするほど傷んでいれば茅だけでなく下地の稲ワラや竹から取り替えなければならない場合もあります。職人や家主は、痛み具合と屋根の大きさを見たうえで、経験的におおよそ必要な茅の量を見積もります。
 間口10軒、奥行き4~5軒の比較的大きい茅葺き民家の場合、全体の補修には通常250~300駄ほど必要でしょう。4tトラックに山積みして10数台分にもなります。これだけの茅を一度に集めるのは困難なため、民家の場合、全体を丸ごと補修するケースは少なく、数年に分けて行うのが一般的です。

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